藤島ジュリー景子や二宮和也も激白。今もくすぶるジャニーズ叩きの構図は、どんなスキャンダルよりも不可解だ【宝泉薫】「令和の怪談」(4)
「令和の怪談」ジャニーズと中居正広に行われた私刑はもはや他人事ではない(4)【宝泉薫】
バラエティー番組での言い合いとは異なり、この騒動は甘いものではなかった。むしろ、事務所が謝り、償うと宣言したことで、アンチ側はますますつけあがり、疑惑はやはり本当だったとして攻撃を拡大、激化させていく。
ジャニーズ叩きは地獄絵図のような様相を呈し、そのなかでキャンセルカルチャーという現象が起きた。それこそ、ジャニー喜多川をめぐる明るい話題はタブーとなり、彼が命名したグループ名なども消滅。そこで思い出されたのが、1980年代なかばの岡田有希子をめぐるキャンセルカルチャーである。
それについては、2023年11月に『「冤罪」で消されたジャニーズと岡田有希子。芸能を殺す人々こそ消えてくれ』という記事を書いた。
現役アイドルが謎めいた自殺をしたことで「芸能界の闇」的な扱いをされ、彼女の作品などが十数年にわたって封印されてしまったことと、ジャニーをめぐるタブー化に通じるものを感じたからだ。
なぜ、こういうことが起きるかについて、こんな分析をしてみた。
ーー岡田有希子のときも感じたことだが、こういうとき、人や事務所、作品を消そうとするのは、芸能を愉しめない人たちだ。芸能を好きではないというか、その作品にもスキャンダルにも人間ならではの業がにじみ出ることを思えば、つまりは人間そのものを好きになれない不幸な人たちである。ーー
そして、最後をこう結んでみた。
ーーたとえば、KinKi Kidsがジャニー喜多川に捧げた『KANZAI BOYA』という曲がある。ジャニー独特のセンスや口癖を愛情をもっていじったもので、じつに味わいの深い内容だ。こういう曲も当分、披露されることはないのだろう。あぁ、もったいない。ここはもう、ジャニーがもったいないオバケとなって、叩いている人たち全員の夢に現れてほしいくらいだ。ーー
ジャニーズアイドルが語るジャニー喜多川のエピソード。それはバラエティー番組などでも鉄板のネタとして面白がられてきた。しかし『KANZAI BOYA』がそうであるように、当分聞くことはできないだろう。
そればかりか、ウィキペディアの「ジャニー喜多川による性加害問題」というページには「所属タレントによる喜多川の好印象作り」という一項があり、こうしたトークが「性加害」のカムフラージュにつながってきたかのような見方が紹介されている。ウィキペディアのこのページ自体がひどいもので、セクハラ、いや「性加害」があったことを前提とした一方的な内容だ。
その「前提」の根拠となったのは、ジャニーズ側が依頼した組織(外部専門家による再発防止のための特別チーム)が作った調査報告書だが、この調査からして「性加害」があったことを最初から前提にしていた。告発者の証言を詳しく検証した気配もなく、ジャニーズ側が頼る相手を間違えたとしか言いようがない。この外部チームもまた「芸能を愉しめない人」の集まりだったのだろう。
なお、このチームの座長は検事総長まで務めた弁護士だったが、この騒動では司法関係者の暴走も目立った。テレビでも活躍してきた有名弁護士は、ジャニーズが莫大な資産を保有していると主張。その理由として、
「ジャニー喜多川さんというのは、少年に対する性行為以外に何の興味もないので、あまり無駄遣いをしない」
とまで言い放ったのだ。故人であることをよいことに、もう言いたい放題だ。
これだけは断言できるが、そういう「興味」しかない人があれほどのエンタメは作れない。芸能を好きな人なら、誰もが納得してくれるはずだ。
いわば、芸能オンチと芸能アンチによってズタズタにされたジャニーズ。いくつもの名前やいくつもの作品、さらには思い出話をする機会まで消されてしまったわけで、今さらながら悔しさともどかしさを禁じ得ない。
なお、6月中旬には二宮和也が『独断と偏見』という本を出版した。彼はジャニーズ事務所から離れることで、自らを守った立場でもあり、恩師についての想いはかなり複雑なようだ。本についての取材会では、ジャニーの人柄について「ある種のピュアさ」という表現をして、
「一対一で話ができたら。死んじゃってるのでなんともいえないけど」
と語っている。ただ「僕にとってこの話の問題のセンシティブさはそこまでなかった」という部外者的なスタンスも強調していた。
そして、冒頭で触れたジュリーの告白本には、彼女が手塩にかけて育てた嵐のメンバーについて仲のよさを語るなか、
「二宮とは近年少し距離があります」
という一節がある。
また、叔父のジャニーや母のメリー喜多川から後を託されたジュリーにとって、ジャニーズ事務所への想いはかなり屈折していたようで、それが一連の対応にも大きく影響していたことが「試し読み」部分からひしひしと伝わってきた。
そのあたりについては、第5回で触れることとする。
文:宝泉薫(作家、芸能評論家)
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